新生皆さんは、人生で一度くらいは「ワークショップ」と呼ばれるものに参加したことがあるでしょう。
あの、初対面の人たちとチームを組まされ、”何かしら”を作らされるあれです。
普段は人見知りを拗らせているはずなのに、いざ始まれば我を忘れて盛り上がり、気づいた時にはメンバーからドン引きされている、なんて経験ありますよね!
……ない?それは私だけだったみたいです。
では逆に、「自分でワークショップを企画・開催したことがあるよ!」という方は、どのくらいいるでしょうか?
もしいま少しでも「もしかして、よくある”ワークショップを企画しました”って記事?」と思った人こそ、この記事を読み進めてください。
違うんです!!
私はここに、AIを使いこなして”完全オリジナル”のワークショップを企画し、「ZYYX トレーディングカード(TDC)」を作った男たちの物語を記したいんです。

菅野 周スガノ マコト
デザイナー
大学ではプロダクトデザインを学び、社会人になってからUI/UXデザインの世界に飛び込む。昔からイラスト制作も得意で、デザイン業務以外にオフィス内装のイラスト作成など、幅広くクリエイティブ活動をしています。
01
物語の始まりはいつだって社長の一声
ZYYXでは毎年「ZYYX DAY」という、経営方針を全社で共有するイベントが開催され、その中でワークショップを行うのが恒例となっています。
「ZYYX DAY」に向けて今年のワークショップはどうするか?という会議の場で発せられた、社長の一言からこの物語は始まりました。(いつもの流れ)
「え〜と、じゃあ今年は菅野と長門でワークショップを考えてよ」
UIデザイナーである筆者ともう一人、ディレクターの長門に、社長から直々のご指名。ありがたいですね。
二つ返事で「はい、喜んで!」
こうして私たちは、ものの数十秒でZYYX DAYに向けたワークショップ企画係として召喚されたのでした。
ただのワークショップにとどめない、俺達の色出してこうぜ!
お上(社長)から直々にご指名いただいた私たちは、巷にあふれたワークショップはやらぬ、俺たちなら「ZYYXらしいワークショップ」を企画できるぜよと、同世代の志士で息巻いていました。
とはいえ、特別なアイデアがあったわけでもなく、「普通にはしたくない」という気持ちだけがやたらと先走っていました。
そんな中、意外にもあっさりと方向性がまとまりました。
「“志(こころざし)”を使って何かできない?」
「志」とは、ZYYX社員一人ひとりが、仕事や社会とどう向き合っているのかを言葉にしたものです。
詳しくは別の記事で触れているので、気になる方はそちらもぜひ読んでみてください。
02
AIによる価値変換、「志」を別の形へ
「“志”を使って何かする」――良いところまで来ましたが、どう落とし込むか。これが私たちの頭を悩ませました。
そんな時、最近巷で盛り上がりを見せる『生成AI』という黒船が一筋の光を照らします。超絶現代っ子志士である私たちは、すぐにその黒船にしがみつきます。
そこからはとんとん拍子でアイデアがまとまり、会話が弾みます。
「社員それぞれの志をAIに取り込んで、オリジナルのキャラクターを生成できるのでは!?」
「それをトレーディングカードにして、実際に配ってワークショップができそうかも!」
「ポ◯モンカードとかも高額で転売されてるしね!」
そうなれば早速検証。
実際に生成されたキャラクターを見て、
「え……完成度、高っ!」
一発で、想像以上にクオリティの高いキャラクターが出来上がりました。
このワークショップの成功の確信と、生成AIへの脅威に震えたあの日の景色は、きっと私の走馬灯を飾ることでしょう。
「オリジナリティ」と「AI」、そして「トレーディングカードの流行」。
それらが複雑に絡み合い、美しいバランスで均衡を保っているこのアイデア――「ZYYX TDCワークショップ」が完成。
これを引っ提げてお上の元へ献上すれば、さぞご満悦のはずと高笑いの私たち。
この時はまだ、キャラクターを生成するプロンプトの安定性の確保と、何より100名を超える社員のキャラクターを生成するという、言ってしまえば「空前の超絶人力地道作業」が待っていることを知る由もなかったのです。
03
3つの試練!「安定したAIプロンプトの作成」「100体を超える画像生成」「ワークショップのルール設定」
私たちの想像通り、「ZYYX TDCワークショップ」のアイデアは好評で、早速実現に向けた動きを命じられました。
実際に内容を詰めていくと、さまざまな問題がありました。
当初はトレーディングカードを実物として印刷する予定でしたが、ロット数の問題などもあり現実的ではないことが発覚。
そのほかにも細かい課題が次々と浮かび上がってきます。
「あれ、これ結構キツくない?」
「というか、時間なくない!?」
安易にしがみついた黒船が、どこに向かっているのか分からなくなりつつある――そんな焦りを感じながらも、私たちは前に進むしかありませんでした。
安定してキャラクターを生み出すAIプロンプト
このワークショップのキーアイテムであるトレーディングカードのキャラクター。そのクオリティは非常に重要なポイントです。
高品質なキャラクターを“安定して”生成するためには、それを支える「プロンプト」の設計が欠かせません。
しかし、このプロンプトが不安定なうちは、以下のような問題が頻繁に発生しました。
- 絵のタッチが安定しない
- キャラクターのみ生成したいのにカードごと生成される
- モチーフが似通ってしまう
- なぜか完全にポ◯モンのキャラクターが出てくる
最後に関しては、もはやアウト。
こうした問題を一つひとつ地道に潰しながらプロンプトを改良し、AIツールの設定も細かく調整していきました。
また、キャラクターのバリエーションを広げるために、プロンプト内に「動物」「精霊」「SF」「ロボット」「植物」などのキーワードを組み込み、バラエティを持たせていきます。
こうした共通要素と、各個人の「志」の情報を掛け合わせることで、世界に一体だけのキャラクターが生成される仕組みを作りました。
……とはいえ、社内にエンジニアが多い影響か、どうしてもSF寄り、特にロボット系のキャラクターが量産されてしまう問題が発生します。
最終的には、「ロボットっぽいものは避けて再生成する」という、極めてシンプルなプロンプト調整作戦で乗り切りました。
100体を超えるキャラクターの生成
ZYYXには100名を超える社員がいます。
一人ひとりのキャラクターをAIが生成してくれるにしても、数が多い!
当初は志を一気に読み込ませれば、AIがすぐに100体くらい生成してくれるでしょ、と高を括っていたのですが、その後AIの力を過信しすぎていたことにすぐ気づきます。
一体一体、真心込めてプロンプトを打ち込まないとダメなのか……それもこれを2人で……と投げ出しそうになった私たちに、
「下を向いているそこの君たち、俺たちもいるじゃないか」
と手を差し伸べてくれたのがZYYXの社員。
総勢7名のスーパー助っ人による人海戦術。
事前にプロンプトのフォーマットは整えていたため、あとは手分けしてひたすら生成していきます。
こうして仲間に助けられている――。
すべてAIでできなかったからこそ生まれた助け合いの輪。仲間のサポートを受けて、再び顔を上げることができたのです。
ワークショップのルール設定
なんやかんやで一番頭を悩ませたのが、このカードを使ってどうワークショップ化するかです。
トレーディングカードらしくバトル要素を持たせるのか?など、ゲームの方向性から迷いました。
話し合いの結果、出た方向性は以下のようになりました。
- 生成したカードごとに優劣はつけない
- ターン制にして誰にでもチャンスを与える
- みんなでカードを見せ合いながら楽しめるゲームにする
最終的に考えたゲームは、ランダムに振り分けられたカードの「数字」と「文字」を、お題に合わせて解決する仲間集めゲームです。
全部で複数ターン制にし、ターンごとの有利不利はあれど、全体で見ればすべてのカードの強さが均等になるように調整しました。
また、みんなで条件が合うように、自分と他人のカードを自然と見せ合えるゲームにすることができました。
例年であれば「ZYYX DAY」は全社員一同で開催されるものですが、この年は各3拠点(東京・大阪・福井)での開催となり、拠点ごとの社員数のばらつきも考慮しながら、「数字」と「文字」の振り分けを行いました。
ギリギリまでワークショップ成立の調整に奔走し、最終的にカードを画像化し、「ZYYX DAY」当日に全社員に一斉配布――あとは本番を迎えるのみとなりました。
04
果たして盛り上がるのか!?「ZYYX TDC」ワークショップ
さあ、やっと来ましたワークショップ本番。
会場からは「朝、変なカード届いたけど何するん?」という空気がぷんぷん漂っていました。
そんなことはこちらも想定内。
ここからルール説明を聞けば、みんなワクワクして狂喜乱舞なのでは――と思いながら説明を終えた後、流れた空気は、
「……えっと、ルールちょっとよく分からなかったんですけど」
みたいな空気。
思惑とは真逆を行かれましたが、それを悟られまいと、
「はいはい、まだ難しいですよね。じゃあデモンストレーションでも一回やってみましょうか!」
と、あたかも想定内のような顔をしながら、予定にはなかったデモンストレーションを挟むことに(ここは完全に長門さんの機転に助けられました)。
デモンストレーションでルールが浸透し始め、会場の空気が一気に明るくなり、みんなカードも見せ合っていて楽しそう!
やっとシナリオ通りに軌道修正でき、いよいよ本番。
ターンを重ねるごとに問題の難易度も上がり、それに比例して会場のボルテージも上がっていきます。
「〇〇さん、この数字のカードですか?あれ、そのキャラクター可愛い!」
など、想像以上の盛り上がりを見せ、結果的に大成功だったのではないでしょうか。
05
ワークショップだけにとどまらない可能性
ワークショップ以降、社員から「他の人のカードも一覧で見られるようにしてほしい」といった嬉しい声もいただきました。
社内のポータルサイトにまとめて、全員のカードを閲覧できるようにしました。
どんなキャラクターかを見にいくと同時に、みんなの「志」も目にすることができます。
他の人がどんな思いを持っているのか――このカードが新たな接点になったのではないでしょうか。
ワークショップの1アイテムに留まらず、今後の可能性を感じるものができたように思います。
また、二人で自由に企画し、ここまで遊び心を持って推し進められたこと。
ゲームとして成立させることなど、アイデアを実装まで引っ張り上げるという貴重な経験にもなりました。
P.S. 記事の冒頭で「大げさなんじゃない?」と思ったあなたも、ワークショップを企画したくなってくれたら嬉しいです。