
近年「GIGAスクール構想」などを背景に、教科書や参考書などのデジタル化が急速に進んでいます。そんな中ジークスは、数々の教育系出版社様のデジタル教材開発を担ってきました。今回は、ジークスが出版社様にどう寄り添い、長年の経験値を活かしてどのようにデジタル化を支援してきたのか、営業・白幡、エンジニア・酒井の視点でご紹介します。
教科書はもちろん、多様な教材のデジタル化を手がけてきたジークス
- 編集部
- 今回は、長らく教育現場のデジタル化に関わる案件を担当してきた営業の白幡さん、エンジニアの酒井さんに集まってもらいました。さっそくですが、これまでの実績について教えてください。
- 白幡
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ジークスとして最初に手がけたのは、三省堂様が提供する教育ICTサービス「ことまな」の案件です。同社の辞書や教科書などをデジタル化したプラットフォームで、2017年にジークスが開発しました。その後も継続的にバージョンアップや改修、追加開発を重ねています。現在までに、Windows・iPad・Webブラウザ・スマートフォンアプリに対応したコンテンツビューアアプリの開発、ライセンス管理、学校の先生方に向けたサポートサイトの構築を行っています。
さらに、複数の医学領域の専門出版社様からオファーをいただき、医学生や看護学生向けの電子教科書サービス開発、薬学生向けの医薬品情報集のアプリ・Web化なども行い、さまざまな知見を蓄積してきました。
- 酒井
- 私は医学系の案件にも長く関わっています。今挙がったもののほか、歯学や理学療法・作業療法など領域は幅広く、それぞれ何十冊という教科書のデジタル化に携わることができました。
- 白幡
- こうした辞書・教科書のデジタル化で実績を積んだことで、ここ5年ほどで学習参考書やドリル、テストのデジタル化についてもご要望をいただき、小学生向けから大学生向けまで、さまざまな教育系出版社様とお付き合いさせていただいています。

人材不足のいま求められる、教員の負担を軽減するデジタル教材開発
- 編集部
- こうした教育現場のデジタル化のニーズが高まった背景を教えてください。
- 白幡
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児童生徒1人に1台のデジタル端末を整備することなどを盛り込んだ「GIGAスクール構想」が、政府主導で進められたこともあり、紙の教科書の代替として2019年度からデジタル教科書の使用が認められたのがきっかけです。2024年度からは、小中学校でデジタル教科書の本格的な導入が始まるなど、デジタル化への社会的機運が急速に高まってきました。
さらに、近年の教員不足・業務負荷の上昇などもあり、紙を前提としたアナログ業務が多い教育現場において、効率化は喫緊の課題。これに伴い、「先生方の業務を削減できるようなデジタルコンテンツを提供したい」というご相談が多く寄せられるようになっています。
- 編集部
- 営業担当者として気を付けていることや、工夫していることはありますか?
- 白幡
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教育現場で使用される教材ですので、4月の年度始まりに間に合うように納品しなければなりません。スケジュールに制限がある中で、「ここまでは盛り込みましょう」と、優先順位をつけてご提案することを意識しています。
たとえば教科書なら、全面改訂は数年に1回程度。まずは一度しっかり作りこんでリリースし、それを使用した先生方のご要望など、教育現場からのフィードバックを精査。そのうえで、次回以降の機能拡張など追加のご提案をしています。
- 編集部
- 出版社様からのご要望に寄り添うのはもちろん、実際の現場の声も反映させることが大事なんですね。
- 白幡
- 難しいのは、紙の扱いやすさをデジタルで再現することです。「算数の筆算で数字を書く」「重要な箇所にマーカーを引く」など、アナログでは簡単なことでも、タッチペンと液晶パネルで再現するには高度な技術が必要になります。10年近く教材のデジタル化に携わってきたジークスには、そうした知見が蓄積されていることが強みだと言えます。
紙の良さを生かしつつ、各学年のユーザー特性を考え抜いた教材開発
- 編集部
- 酒井さんはエンジニアとして、お客様からのご要望はもちろん、その先にいる小中高生や教員の使い勝手まで考えた開発をしているそうですね。
- 酒井
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そうですね。とくに教育系コンテンツには、教科書検定に代表されるような規定やガイドラインが存在します。色の使い方やレイアウトなどにも一定の決まりがあるので、文部科学省などの資料をチェックするところから始めなければなりません。
また、デジタル化するコンテンツがどんな児童・生徒・学生に向けたものかという前提の部分はとても大事です。とくに小学生向けの場合はレギュレーションも細かいですし、「3年生はこの漢字をまだ習っていないから、ふりがなをつけよう」「この年齢の子どもの指の大きさだと誤操作しやすいから、もうちょっとボタンを大きくしよう」など、細部まで考慮します。
そのほかにも「ボタンを押した時に音を出す」など、年齢が低いほど興味を続かせるための仕様が必要ですが、高校生向けなどは、学習効果を高める施策を優先します。ジークスにはさまざまな年齢の子どもを持つ社員が在籍しているので、そうしたノウハウも活用しながら、ユーザーのことを考えた提案を心がけています。

- 編集部
- 紙媒体をデジタルに落とし込む際の工夫や、おもしろさについても教えてください。
- 酒井
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紙の利点はやはりランダムアクセス性能です。辞書を例に取ると、側面に「あ」「か」「さ」「た」「な」と書かれた目印がありますよね。「『さ』で始まる単語だから、全体のだいたい1/3くらいのところを開こう」と瞬時に当たりをつけられます。デジタルでこれを再現できるよう、目次を3段階の粒度で実装するなどの工夫をしながら、紙の良さを生かしていきました。
また、全体として細かい修正が多いので、プログラム的にもフレキシブルな、変化に対応できるつくりが求められます。ここは、技術者としておもしろい点ですね。
- 編集部
- デジタルだから可能な学習体験もありそうですね。
- 酒井
- お手本の英語にかぶせるように音読して、リスニングとスピーキングの両方の力を養う「シャドーイング」は、デジタル化で気軽にできるようになりました。また、書き込みや色分けを自由にできるため、「/(スラッシュ)」で文章を区切って読みやすくする「スラッシュリーディング」もしやすいのではないでしょうか。今後デジタル化が進むことで、AIを活用したさまざまな学習方法も実現できると思っています。
小学生から大学生まで “教える”を進化させるジークスのデジタル教材開発
- 編集部
- 最後に、お二人から記事を読んでいる皆様へのメッセージをお願いします!
- 酒井
- 「ゆりかごから墓場まで」ではないですが、私たちジークスは小学生向けから大学生向けまで、ありとあらゆる教材のデジタル化を担ってきました。それぞれのコンテンツの違いを熟知している自負があります。
- 白幡
- ジークスは教材のデジタル化に長年関わっているので、「小学1年生向け教材には漢字をつかわない」など、出版社の皆様にとっての「当たり前」をナレッジとして蓄積しています。だからこそ、今までベンダーに依頼をしたことがない出版社様も、ある程度「おまかせ」でご発注いただけます。ぜひ安心してご相談いただければと思います。
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