INTERVIEW

次世代PL育成のための研修プロジェクト「PLG」

今回は、ジークスが2024年から取り組んでいる若手PL(プロジェクトリーダー)育成研修プロジェクト「PLG(Project Leader Gakuen)」の全貌をご紹介します。属人化しがちな案件管理スキルの標準化を目指し、リーダーの育成を体系化したこの取り組み。背景やねらい、実際の研修内容などについて、プロジェクトを主導した笹嶋に聞きました。

案件の「旗振り役」を育てる、体系的なプロジェクトリーダー教育とは?

編集部
これまではPLに対してどんな教育が行われていたんでしょうか?
笹嶋
新しく就任したPLに対して、以前は上長であるPMが指導をしていました。各PMが使っている案件管理テンプレートなどを共有したうえで、OJTをベースとした教育を実施していたんです。新人PLは、SE時代に参画した案件でもPLの動きを見ていますし、先輩の背中を見て案件管理方法を学び、リーダーとしての動き方を身に着けていくというスタイルです。
男性が話している様子
編集部
OJTを中心とした教育で、どんな課題が生じていたんですか?
笹嶋

新人PLの場合、「指示される側」から「指示する側」になったばかりで、「自分から考えて動く」という姿勢になりにくい面があります。SE時代のまま目の前の作業を行うだけになってしまい、PMが不足を補う形になり、PL育成がなかなか進まない例もありました。

本来のPLは、案件の「旗振り役」であってほしい。案件の全体を俯瞰して、ゴールへの道筋を立てたうえで、そこから逆算して何をするべきか考えることが求められます。また、お客さまとの窓口としての役割もあるので、信頼関係を築きながら、お客さまとすり合わせを重ねて案件を成功に導かなければなりません。OJTによる属人的な指導だけでは、そうしたノウハウをPLが習得しづらいため、体系的に理解してもらう取り組みが必要になっていました。

編集部
PLに体系的な教育をするために、研修を行うことになったんですね。
笹嶋
まさにその通りで、組織としてPLを育てるための「仕組み化」を目指しました。そこで、PLの案件管理能力を標準化し、それを継続してアップデートできるような研修を構想しました。これからPLを目指す若手メンバーが、安心して手を挙げられるような環境をつくっていきたいという思いもありました。

ベテラン講師陣がテーマを考案 全14回の実践的な研修プログラム

編集部
PL研修プロジェクト「PLG」のテーマはどのようにして決まっていったんでしょうか?
笹嶋

リーダーに必要な一般的なノウハウはもちろん、ジークスならではの実践的なテーマを、講師となる現場経験豊富なPM・ベテランPL、品質管理グループのマネージャーたちと考えました。

テーマは、リーダーシップ論、プロジェクト進行、原価管理、運用・保守のほか、見積もり・提案書、要件定義、ファシリテーション、そして外注管理や契約、決算書の読み方など、多岐にわたります。

編集部
多角的な視点で、案件進行に関わる細かいテーマまでカバーしているんですね!
笹嶋

そうですね。11名の講師陣が分担して資料を作成して、全員でチェックを行うことでクオリティを担保しました。研修は、就任まもないPLと若手PL9名を対象に2024年11月にスタートしました。1回約1時間の講義を全14回実施するカリキュラムです。

例えばファシリテーションをテーマにした回では、お客さまとの会議で相手の発言を尊重しながら、どのタイミングでどんなふうに話を区切るのかなどをレクチャーしました。リーダーになって初めて主体的にお客さまと会話する時は、SE時代とのギャップを感じるPLも多いと思います。そのため、「困ったら真似できる」というレベルで、最低限押さえてほしい部分を教えています。

編集部
実践的な学びのために、どんなことを意識しましたか?
笹嶋

講義の内容は基本的に講師に任せるスタイルでしたが、ワークショップやクイズなど、どこかに必ず受講者が考える時間を入れてもらうようにしました。

また、学んだことを自分なりに解釈してもらうために、毎回研修の最後に受講者からアンケートを取って、「今日の講義内容で、明日から使えると思ったこと」を聞いています。追加質問も記載してもらい、後日回答するようにもしています。

楽しそうに語る男性の様子

研修後のプロジェクトリーダー意識改革と、研修の継続アップデート

編集部
アンケートでは、どのような声が出ていますか?
笹嶋

受講生からは、「ふつうに仕事をしているだけでは知り得ないことを学べてよかった」「今まであまり聞く機会がなかった他のPLの考え方に触れ、自分の考えを整理できた」「要件定義の時に注意すべきことなど、あまり掘り下げていなかったことを考える機会になり、勉強になった」などといった声が上がっています。

「講義だけでは学びきれない、より実践的で具体的なノウハウを知りたい」という追加質問も寄せられています。研修を通して、少しずつPLの意識改革が進んでいると思っています。

編集部
今後は内容を柔軟に見直すなど、さらに研修を充実させていくそうですね。
笹嶋

初めての取り組みなので、現在進めている研修が終わった後に振り返り会を行い、次回のために改善点を詰めていこうと考えています。個人的には、講義における演習の要素や、講師と受講者相互のコミュニケーションを増やしていきたいですね。

今後の見通しですが、次年度からは新たにPLに昇格するメンバーにも研修を実施します。また、毎年定期的に講師が集まる「リビングプログラム(仮称)」を開催して、現場の声やトレンドを踏まえて研修内容を見直していく計画です。もちろん、その情報は各PLに共有していきます。

編集部
継続して情報のアップデートと共有をしていくということですね。
笹嶋
PLはそれぞれの業務の進め方をアレンジしていますし、「このやり方はいいよ」という情報を社内展開する場になるといいですね。それが会社全体のPLレベルを上げることにつながると思っています。

「育てる」文化の醸成、安心してプロジェクトリーダーにチャレンジできる環境へ

編集部
これまでのような「背中を見せる」「本人に任せる」というPL指導に加えて、研修を通して「育てる」という文化が、ジークスに醸成されそうです。
笹嶋
ただ単に任せるだけでは、PLは不安になってしまいますよね。私はこの研修が終わった後、講義資料をPLに「カンペ」的に活用してもらえるといいなと思っています。研修を通して「こういうことを意識しなきゃいけないんだ」という気づきを得て、悩んだときに何度も振り返って、参考にしながら案件を進めてもらう。それを繰り返すことで、ノウハウを自分のものにできるはずです。
編集部
若手エンジニアのキャリア形成やステップアップにも好影響が期待できますね。
笹嶋

PLは基本的に、「チャレンジしたい」と手を挙げてくれたメンバーに任せています。挑戦する人をサポートするのがジークスの文化ですし、研修を役立ててほしいと思っています。

また、このPL研修が「学校」としてだけでなく、知識や経験を補完する場所になると嬉しいです。研修を受けたPL自身が将来は講師となり、次世代に知見を還元していくことを期待しています。

腕を組んで微笑んでいる男性の様子