
ジークスでは、業務システムやアプリケーションのUIデザイン提案を通じて、多くのクライアントとの出会いを生んできました。特にBtoB領域では、複雑な業務課題を、ユーザー視点でいかにわかりやすく、使いやすく整理できるかが鍵となります。今回は5人のデザイナーが、限られた情報と時間の中で「期待値を超える」提案を形にするまでの思考と工夫を語ります。
藤原大輔(デザイン室 浪速のぽっちゃり室長)
むらたしゅういち(デザイン室 田舎暮らしおっさんデザイナー)
黒石閑(デザイン室 Figma伝道師)
大西奈々(第二事業部 校正マニア)
中道みずき(第一事業部 はしっこプレイヤー)
2つの起点から始まるデザイン提案、新規とリニューアルの向き合い方
──BtoBのシステム開発案件の場合、最初の提案フェーズでデザイナーはどんなところから考え始めていますか?
- 藤原
- BtoB案件はユーザーが毎日使うものだから、そこのストレスがないように、直観的に使いやすそうだと思えるプロダクトをよく考えている。ジークスで扱うBtoB案件って言っても、大きく“新規(サービスローンチ)”と“リニューアル”の2つに分かれるよね。
- むらた
- 新規はゼロからつくるものなので、提案時には曖昧な部分が多い。リニューアルの依頼内容は様々だけど、クライアントが課題に対して検討した内容を踏まえて、プロとしてさらに一歩踏み込んだ改善提案を求められることも多い。
- 黒石
- 共通しているのは、どちらも抽象度が高いこと。だからこそ、こちらが丁寧に要件を解釈しないといけないですよね。
──新規とリニューアルで大きく違うんですね!では、新規案件にはどのような特徴がありますか?
- 藤原
- 業務系の新規案件では、業界ごとの業務フローやルールが複雑で、汎用的なUIの型だけではカバーしきれないことが多い。クライアントも“実現したいこと”が明確にあっても、それをどんな操作でどんな画面に落とし込むのか、なかなかイメージしづらいのが自然だと思う。
だから提案の段階で、操作感を具体的にイメージできるビジュアルや、画面の世界観をしっかり描き出すことが大切かなと。「こういう操作になるんですね」と視覚的に伝えることで、クライアントとの共通認識が生まれやすくなるし、それがプロダクトの“想像の入口”になる。
- 黒石
- 僕は新規のアプリ提案を担当することが多いですが、その場合はアイデアを盛り込みやすい感じはしますね。
- 大西
- 私は「この機能が欲しい」と、具体的な要望をいただくことが多いですね。そういう時こそ、本当に実現したいことは何かを丁寧に確認しながら、必要な機能を提案するようにしています。
- むらた
- プラスαのアイデアを提案する手段として、競合プロダクトのインプットだけではなく、全く異なる業種のプロダクトやデザインに触れて、そこからインスピレーションを得るようにしている。
- 藤原
- BtoBで新規の場合は、毎日触るものだからユーザーにストレスを与えたくない。ハードルを下げて、シンプルでわかりやすいものを作ることを意識している。(新規は特にそう)
- 中道
- ユーザーに寄り添うことはもちろんだけど、加えて「クライアントがユーザーに望んでいることは何か?」という観点も重要で、しっかり目を向けるようにしています。
──一方で、リニューアルにはどのような特徴がありますか?
- 藤原
- リニューアルでは、「何が課題か」は見えていても、「なぜそれが起きているのか?」や「そもそもプロダクトとしてどうあるべきか?」まで掘り下げられていないケースも多いよね。
- 中道
- 「色が見づらい」「画面が複雑」などの声は多いですね。長年運用してきたことでシステムがごちゃごちゃになっていて、どこから手をつけていいか分からない状態だったり。デザインそのものが老朽化していて、情報量も多く視認性も悪い。BtoBだと、特にこういうことが多いですね。
- むらた
- クライアントやエンドユーザーは現状のプロダクトにある程度慣れているから、大きく変えることに対して抵抗がある場合も多いよね。そういう時は、提案にかけられる時間にもよるけど、現状の良い点を活かして改善するものをスタンダード案、ジークスがベストだと考えるものは大幅刷新のクリエイティブ案、といったように“振れ幅”を持たせている。
- 大西
- 選択肢が広がることで、クライアントも「スタンダード案をベースにクリエイティブ案のこの要素を取り入れたい」みたいに、改良のビジョンを膨らませやすくなりますね。
- むらた
- 案件はスケジュールや工数も大きく関係してくるので、現実的にはスタンダード案が選ばれることが多いと感じる。
- 藤原
- だからこそ、最終的に選ばれる案がどれであっても、「ここまで考えてくれているんだ」という提案のプロセスが大事。ジークスの提案の強みは、短い期間の中でも柔軟に発想しつつ、仕様をきちんと読み解いた上で複数の選択肢を提示できること。その自由度の高さと理解の深さが、「ちゃんと読み込んでくれている」と感じてもらえる理由だと思う。
デザイナーごとのアプローチで“寄り添う”ことがジークスの提案の強み
──各デザイナーで、提案の際に意識していることはありますか?
- 藤原
- 新規もリニューアルも、正直限られた時間と情報の中で進めることが多いから、その中でどうデザインしてクライアントに寄り添うかが肝心だよね。
- むらた
- だからこそ、どれだけ知ることができるかが大事になると思う。案件はもちろんのこと、クライアントのこと、エンドユーザーのこと、競合企業やサービスなどをよく知ることでクライアントと共感できたり、意思疎通が円滑になったり。そういったことから、エンドユーザーやクライアントに寄り添ったデザインを提供できる気がする。
- 黒石
-
僕もまず“このプロダクトはどんな情報を扱うのか”を掘り下げて考えますね。そうすることで、特に新規の場合はアイデアがたくさん出てくると思うし、仮説が外れてたとしても、そのアイデアはどういうロジックでそこに至ったかを伝えれば、提案の段階でクライアントともう一段階深い話し合いができます。理解した上で提案すると、ちゃんと考えてくれてるなって伝わります。
また、提案では新しいUIデザインを提示することになるので、“ぱっと見て使いやすいだろうな”と思ってもらえるように心がけています。たとえば新入社員が「これ、明日から使って」と言われた時に「うわ、なんだこれ」と思わないように。「使えそう」と感じてもらえるように、難しそうに見えるUIでも、「なんとなくこうやって操作するのかな」って雰囲気が伝わることが大事だと思っていて。提案にアイデアを盛り込むときも、その感覚が伝わるよう意識しています。
- 中道
- いくつかユーザーフローの仮説を立てて、複数案展開することもありますね。ユーザーにとって必要な操作をする時にどんな画面だと使いやすいか、っていう観点は常に意識して、なるべくシンプルになるように情報設計から丁寧に考えています。
- 大西
-
ジークスと組めばどんなプロダクトが出来上がるのか、具体的にイメージしやすいようにデザインモックのギミックを作り込むようにしています。
あとは、クライアントによっては担当者が上層部に向けて社内プレゼンしたり、提案資料を社内回覧するケースもあるので、打ち合わせの場にいない人が見ても伝わるような資料作りを意識しています。
- むらた
- 確かに大西さんのそういうところ、丁寧だなと思った。モックだけで終わらせず、資料としてちゃんと伝わるものを用意していて、そういう“寄り添い方”は大事だなと。
- 藤原
-
自分の中で一番大切にしているのは、“期待値を超えること”。クライアントが思い描いていた以上の提案にするために、どんな操作感や体験が“気持ちいい”と感じられるかを常に意識してる。とはいえ、ただ目新しさを追うのではなく、“これは現実的に実現できそう”と思ってもらえることも同じくらい大事。
特にリニューアルの提案では、課題を並べるだけでなく、既存プロダクトの良い部分を見つけて活かす。現状を否定せず、「ここを伸ばせば、さらに良くなる」と伝えることで、納得感と現実味のある寄り添った提案になることを心がけてる。
- むらた
- “期待値を超えること”は最も大事。
ここまでやった!期待に応えるデザイン提案の実例
──今まで提案したUIデザインで「これは面白かったな」とか「手応えがあったな」と感じた案件はありますか?
- 藤原
-
印象に残っているのは、自動車メーカーとの新規提案。
ピンポイントな依頼内容で、ヒアリングも限られていたので、まずは複数の方向性を提示して、会話を生むことを意識した提案をしました。プラモデルを作るみたいにできないか?など場が盛り上がったり。(笑)
提案の仕方も、テーマの抽象度や課題の明確さによって変えるようにしていて、世界観を見せて方向性を探るときと、案ごとの違いを言語化して比較してもらうときとでは、アプローチを切り替えてる。
- 黒石
- 自分はある案件でしっかり作り込んだUIデザインを見せたときに、クライアントが「へぇ、こういう整理もあるんですね」って興味を持ってくれて。雑談みたいな感じで会話がはずんだとき、「これはうまくいきそうだな」って感覚がありましたね。
- むらた
- 事前のリサーチが効いてた感じ?
- 黒石
- もちろんリサーチもしたんですけど、正直上手く作れたっていうのが一番大きかったかもしれない。(笑)提案って、半分くらいはノリで出来ている気もしてます。
- 中道
- 保険会社のリニューアルが印象に残ってますね。シニア層からの「使いづらい」という声が多くて、サポートセンターへの問い合わせが多いことも悩みのようでした。そこで、ユニバーサルデザインの観点から、フォントサイズやコントラストを適切な数値に設定するなど、資料で明確な根拠資料などを添えて提案しました。
- 藤原
- 特に保険のような慎重な業界では、そうした裏付けのある提案が大事。単に見た目を整えるのではなく、“なぜそうするのか”を明確に示すことで、相手の納得度も高まる。
- 中道
- ライフステージの変化のタイミングでアクセスされることが多いので、結婚や引っ越しに必要なアクションをトップページにピックアップするなど、工夫も取り入れましたね。
- むらた
- 提案内容によってアクセシビリティへの配慮の度合いは異なるけど、当然のこととしてきちんと考慮している点は伝えるようにしている。
- 大西
-
課題と要望が、複数のドキュメントに散らばって書かれていた案件があったなぁ。そのときは課題をわかりやすくおさらいするために、テレビショッピングっぽい構成で提案してみました。「こんなお困りごとはありませんか?」「そこでこちらのご提案です!」って感じで。(笑)
それがハマって、先方がすごく笑顔で「それそれ!」って反応してくれて。あのリアクションはすごく印象に残ってます。
振り返って見えた、デザイン提案に込めた“楽しさ”と“深掘り”の姿勢
──こうやって話してみると、提案はそれぞれの見せ方ができて面白い仕事ですね。
- 黒石
- うん、最終的にはテンションが意外と大事だったりしますよね。
- 藤原
- テンション上がってるときって、手が止まらない。(笑)
- 黒石
- 新しいことをリサーチするのも楽しかったですし。
- むらた
-
提案は、色々と楽しめる場でもあるよね。
デザインのアプローチも比較的自由度が高いので、最も楽しい時間だったりする。
- 藤原
- そうそう、制約が少ないぶん、どこまで攻めるか試せるっていう。実験的な表現も含めて。
- 大西
- いままで関わる機会がなく、詳しくなかった業界のことを知ることができるのも楽しいし、面白いですね。
- 中道
- たしかに、この先の人生で関わることないだろな〜という業界やコンテンツでも、実際触れてみると意外と興味を持てたりするから身になる。(笑)提案っていろんな意味で良い機会。
──皆さんのお話を聞いて、デザインの提案という仕事の奥深さと、それを楽しみながら取り組んでいる姿勢がすごく伝わってきました。
ジークスでは、表層的なデザインの提供にとどまらず、クライアントのビジネス課題に深く向き合い、最適なUI/UXを追求しています。
具体的な要件が定まらない段階でも、豊富なリサーチと多角的な視点をもとに、本質的な課題の抽出とデザイン、システムを絡めた提案を行うことが可能です。
業務システムのUIデザインに課題を感じている方、改善の方向性を模索されている方は、ぜひ一度お問い合わせください。
