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まだ人にも役割がある!デザイナーがAIと協働、ビジュアル作成のプロセスを紹介

ある日、社内のオウンドメディア担当者にこう言われました。
「デザイナー視点でAIを使った制作についての記事を書いてみない?」
引き受けたのは良いものの何を書くか困り、とりあえずAIと会話して記事の概要を決めることにしました。
「デザイナー視点でAI活用の記事を書くので、アウトラインを一緒に作りたいです。考えていることを後述するのでまとめてください」

AIと壁打ちをしながら、AIを使った過去の制作過程を振り返ってみると、最後は人間の手で調整することが多かったと思います。

まずはその試行錯誤からご紹介します。

AI頼みの未来はまだ程遠い?デザイナーが並走して分かった距離感

上記の通り、これまで何度かAIを使って弊社オウンドメディア「FOCUS」のアイキャッチを作成しています。

AIで作成した、電球ロボットの画像

電球ロボットの画像をAIで生成しました。私が描いたイラストを、AIが3D風の画像にしました(生成されたロボットが可愛いから我が家に1〜2匹欲しい)。
https://www.zyyx.jp/focus/engineer-tips.html

AIで作成した、本棚に三冊の本が立てかけられている画像

本棚の背景画像、立てかけてある三冊の本の各種パーツをAIで生成して、それらをコラージュして作成しました。文字は手作業でデザインしています。
https://www.zyyx.jp/focus/novelty-design.html

これらの制作にAIを使ったのですが、手作業の部分も多くありました。巷で言われているような「プロンプトを入れれば一発で完成!!」という訳でもなく、(プロンプト界隈を追えてないのもありますが)案外泥臭い制作過程です。

AIはクリエイティブ分野でも人間より強くなれる!と私は信じているのですが、現状は人間の手や脳を動かす方がクオリティは高いと思っています。

そんな「AIとデザインの現状」をAIと会話していた際に閃きました。
「この記事のメインビジュアル作成の過程を紹介すればいいじゃん!?」
ということで、以降はこの記事の最初にあったビジュアルができるまでのメイキングを紹介します。なお、本文は私(人間)が書いてますよ。

1:AIと一緒にリサーチ

ビジュアル制作に着手する前にアイデアの元を探すべく、対象のトピックのリサーチから始めます。この工程でもAIを使いながら、以下のようなことを行います。

  • そのトピックに関する基礎知識や語源をAIに教えてもらう
  • モチーフイメージをAIに尋ねる
  • Google検索の画像サーチを見る(一般的なイメージがわかる)

さらに、ビジュアルをまとめたサイトを眺めてアプローチ方法を検討します。
この記事のビジュアル作成にあたっては、「AIによる画像作成」のリサーチを行いました。

多くの場合、雑談のノリで質問しています。

「AIが絵を描く時ってどういう手順なの? 人間なら基本的にアウトラインを描いて描き込んでいくけど、アプローチが違うよね?」

AIからはこんな返答が返ってきました。

「結論から言うと、AIは「線を描いてから塗る」生き物ではない。
人間が建築家なら、AIは霧の中で彫刻を削り出すタイプだ。」

非常に詩的な答えすぎるので、もう少しわかりやすくまとめてみました。

人間の描画プロセス(ざっくり)

  • 形の仮説を立てる(ラフ・アウトライン)
  • 構造を固める(アタリ・パース)
  • 局所を詰める(線・陰影・質感)

時間はに流れ、思考も階層的です。

AIの描画プロセス(実態)

  • 最初は完全なノイズ画像
  • 「これは“猫らしい”“空っぽすぎる”」という統計的ズレを少しずつ修正
  • ノイズを何十ステップも削り続ける
  • 気づいたら「それっぽい絵」になっている

多くの画像生成AI(Stable Diffusion系など)は、このように動きます。

そのほかにも雑談をしましたが、「AIによるビジュアル作成」というテーマを絵にするなら、「ノイズ」の概念を取り入れるのが良さそうだと思い、スケッチの工程に進みました。

2:AIにスケッチを頼んでみる

対象についての知識ややりたいアプローチを元に、軽くスケッチを描いたりビジュアルを生成してもらいます。

作ることでイメージが深まる場合もあれば、逆にまとまらないことも。この過程で言語や概念的なものから、画としての軸を見つけて、次の工程で具体的な作業に落とし込みます。
また、文字を載せる場合はこの辺でコピーの素案を考えます。

「ノイズ」をテーマにする関係で、絵の構図はシンプルにして、エフェクト表現を軸に制作することにしました。

テーマを伝えると、AIからは以下のようなイメージが生成されました。

AIで作成した、ノイズの霧から抽象形が形作られているイメージの画像

ノイズの霧から抽象形が形作られているイメージ概念としては悪くないですが、霧の表現は上からエフェクトをかけたように見え、物体の形状も幾何学形を並べたのみで画として微妙でした。

AIで作成した、銀河系を例にして、粒子が集まって球体が生成されるイメージの画像

銀河系を例にして、粒子が集まって球体が生成されるイメージ
銀河系に引っ張られすぎて星雲の印象が強すぎます。色やエフェクトも特殊効果感が強く、ちょっとチープな印象です。

AIで作成した、バランスを調整して、ノイズのエフェクトを意識させたイメージの画像

バランスを調整して、ノイズのエフェクトを意識させたイメージ
良くなってきましたが、ノイズが上からエフェクトをかけただけで、全体的な絵のチープ感が拭えません。テーマである生成のイメージとも合致しないので、別のスレッドに移動します。

ここまでにかかった時間は1〜2時間ほどです。これらのスケッチを元に、改めて制作に進みます。

3:プロンプトと格闘しながら制作

画作りの方針が定まったら、より具体的な制作に入ります。
使用ツールは様々で、生成AIだけでなんとかなる場面もあれば、3DCGツールを触ってみることもあります(日頃触らないツールで作る楽しみも)。
AIの利用頻度は毎回異なりますが、特にフォトリアルなレンダリング表現を使う場合は、3DCGで作り込むよりも素早く高品質にできることが多く、リアルな表現にしたい時にはよく使います。
また、AIを使う場合でも素材としてコラージュすることが多く、そのまま使う場面は少ないです。

今回の絵作りではノイズ表現をどう行うかが重要だと考え、映画やゲームのノイズ表現についてリサーチを行いました。

AIにまとめてもらったところ、ノイズにもいろんな表現があることがわかりました。

指示をする時の用語にも使えるので、これらの単語を入れて画像を作ってもらいます。

AIにまとめてもらった、ノイズの表現一覧の画像

試行錯誤する中で、ガラスをモチーフにすると全体的な透明感を保ったまま、ノイズや色の屈折で綺麗なビジュアルができることがわかってきました。

ここからいくつかパターンを作ります。

AIで作成した、ガラスをモチーフにしたノイズの画像1
AIで作成した、ガラスをモチーフにしたノイズの画像2
AIで作成した、ガラスをモチーフにしたノイズの画像3

割といい感じですね。

抽象的なのでメインビジュアルとして成立するか不安ですが、クオリティは必要なラインに届いた気がします。

これらを素材として仕上げ作業に進みます。

4:AIに頼れない仕上げ作業

AIを使った制作でも、現状は最後に自分の手で微調整を入れています。
微調整と言いつつ、実はここに一番時間がかかります。制作時間の1/3から1/2ほどがこの工程になることも珍しくありません。
文字やロゴなどレンダリングしない要素を加えるので、そのバランスをとるのはもちろんのこと、色味や明暗の調整、ライトの追加など少し手を加えます。引きで見た時の全要素のバランスを調整することで、誤差程度ではありますが仕上がりが良くなります。
現在のAIのビジュアルは、ディテールがやや均一になりやすい傾向があるので、強弱の調整を意識することが多いです。

生成した画像を使って、メインビジュアルの画像サイズに合わせたレイアウトを検討します。

生成された中で一番ノイズ表現がカッコよかったものを選び、配置方法を考えます。
左に伸びる形状も良いですが、バランスを踏まえると上向きが良さそうです。下部の鏡面を削除して回転、彩度が高い方が色のパーティクルが目立つので、彩度を上げて文字を置きやすく調整しました。

文字を置くことで抽象度を下げて、少しだけメインビジュアルっぽくしました。(それでも抽象度が高すぎてアート本の表紙みたいになってますね....)

大体決まったので、画像のディテールを調整します。

AIで作成した、ノイズの画像を調整しているキャプチャ1
AIで作成した、ノイズの画像を調整しているキャプチャ2

部分的に微妙なノイズのエフェクトは、分布する位置を微調整します。

AIで作成した、ノイズの画像に文字やエフェクトを重ねているキャプチャ

レイアウトして文字を重ね、色味のエフェクトを重ねて微調整。
載せるテキストもAIと一緒に考えて、人力で配置の調整。
ノイズがテーマですし、ノイズを恐れず思い切って彩度を上げました。

記事のノリとは雰囲気が全然違うけど....様々な工程を経て、ようやく完成です!!

完成したノイズの画像

最後に

今回はAIを使ったビジュアル作成プロセスをご紹介しましたが、「AIによる画像作成」という抽象度の高いテーマだったこともあり、できあがったビジュアルの抽象度が想像以上に高くなってしまったことが反省点です。普段はもう少し具象的でポップなものを作っているのですが....

序盤の作成プロセスの話に戻りますが、AIはディテールの集合として絵作りの過程を経る関係で、ディレクションを欠くと全体が均一で主軸の定まらない絵になりやすい傾向があると思います。

AIの進化で解決する部分も多いはずですが、プロンプトを頑張ったり自分の手で修正したりと、まだまだ人間側の頑張りがある方がクオリティは上がると思います。

生成AIは日進月歩で、もはや自分も置いてかれている側の可能性もありますが、人間のレベルに関わらず付き合ってくれるのがAIの良いところ。これからも根気強く使っていきましょう。