品質管理はシステム開発の成否を分ける、とも言える大切な業務です。ジークスでは2022年に「品質管理推進グループ」が発足し、開発現場の効率的な品質管理に向けた取り組みを続けてきました。今回は、グループのリーダーを務める西本が、さまざまな取り組みを通して得られた成果や、ジークスの品質管理の特徴、今後の展望などについて語ります。
コミュニケーションとレビュー、両軸からの品質管理
こんにちは。ジークス品質管理推進グループの西本です。2023年に、品質管理強化に向けた取り組みをご紹介しましたが、今回は1年間の活動で得られたこれまでの成果を中心にお話しします。
2023年 ジークス品質管理の記事はこちら
システム開発の要石――ジークスが今、「品質管理」に再度向き合う理由(前編)
さらなる価値提供を目指して。「品質管理」強化への具体的な取り組み(後編)
まず、品質管理推進グループの体制と現在の取り組みについてご紹介します。私たちのグループは、上長を含めて3名の体制。それとは別に、社内活動の一環として品質管理の小委員会があります。ここにはさまざまな部署の社員9名が所属していて、品質管理レビュー作業などを分担しながら運営しています。
ジークスでは常に多数のプロジェクトが動いています。品質管理グループでは、このうち平均して40件ほどをフォローしていて、案件ごとに最低月1回、フォローアップミーティングを開催。PM(プロジェクトマネージャー)やPL(プロジェクトリーダー)に進捗や課題のヒアリングを行っています。大きな障壁があればミーティングの頻度を高めたり、事業部長にも参加してもらい、対応策をプロジェクトメンバーと検討します。また、要所要所で成果物のレビューとフィードバックを行うことで、高品質を担保できるようにしています。
メンバーのアクションを促し、スムーズで高品質なシステム開発を実現
続いて、ここまで品質管理推進グループとして進めてきた取り組みの中で、手ごたえがあったものをご紹介します。
フォローアップミーティング
開発プロジェクトチームへのフォローアップミーティングは、品質管理推進グループが設置された後に実施した取り組みです。グループ発足当初、品質管理のための明確なものさしがなかったため、「まずは、いま動いている案件の現状をプロジェクトメンバーにヒアリングしよう」と考えたのがきっかけでした。
定期的なミーティングでは、プロジェクトメンバーへの状況確認以外に、対話による意思疎通の円滑化という効果も得られました。フォローアップミーティングでは、案件の細かい事情を知らない私が参加しているため、メンバーは前提を含めてより丁寧に現状を説明する必要があります。第三者向けに話すことで、「タスクのボリュームがリーダーに偏っている」「メンバーがここに不安を抱えたまま進行している」などの課題があぶり出されてきます。それらをきちんと「注意すべきこと」として取り上げれば、次のアクションにつなげることができます。
例えば、制作チームと開発チームの両方が関わる案件は、責任範囲があいまいになっている場合があります。そのグレーな部分を誰がどこまでやるのか、ミーティングの場で決めてもらうこともありますね。
設計書レビュー時の考慮漏れの指摘
設計書レビューの際は、考慮漏れがないか意識して確認します。指摘を行うことで、早い段階で設計ミスを防げるようになりました。
最初に要件定義書をひととおり読んだうえで、全体の要件に対して整合性が取れているかを確認しています。設計者が見落としがちなポイントを中心に確認しますので、指摘内容に対してクライアントと調整したうえで、仕様の見直しに繋がったこともあります。
細やかなレビューのため、また設計時の考慮漏れを防ぐために、ガイドラインも作成しています。このガイドラインは、フォローアップミーティングで話題に上がった考慮漏れ事例などをもとに、随時更新をかけています。また、プロジェクトメンバーが設計する際にもこのガイドラインを利用してもらうことで、考慮漏れを防ぐようにしています。さらに、私だけではなくグループメンバーや小委員会メンバーにも指摘をもらい、多様な視点でレビューを行うよう努めています。
継続的なリスクの指摘
プロジェクトメンバーがつい後回しにしてしまうタスクへの、継続的なリマインドも心がけています。これが具体的な行動につながり、進行の遅れを抑える効果が出ています。
よく見られるのは、お客さまからの回答待ちで進行が滞っている例。とくに「急ぎではないけれど、確認しないとな…」というレベルだと、ぎりぎりまで進まないということもあります。フォローアップミーティングのときには、話が出た段階で次のアクションの期日を提案し、メンバーがカレンダーにスケジュールを入れるところまでサポートします。
設計書レビューに関しても、これまでジークスにはプロジェクトメンバー以外の第三者にレビューをもらう習慣がなく、「設計書が完成したら品質管理推進グループに連絡」という部分が遅れがちです。その点も、フォローアップミーティングの中で、「○月○日に設計書ができるなら、そこで連絡をくださいね」とこちらからプッシュして、スケジュールに入れてもらうようにしています。
プロジェクトに寄り添ったサポートがジークスの品質管理の強み
企業にもよりますが、品質管理担当部署は、レビューをメインとした監査機関のような役割を担っている場合が少なくありません。ジークスの品質管理推進グループは、「この品質ではダメ」と指摘するだけではなく、問題解決のために何をしたらよいかを相談するなど、プロジェクトメンバーをサポートしている点が特徴です。
これは、私自身の開発メンバーとしての経験が影響しています。いくつもの案件を並行して進めている中で、ただ設計書にNGを出されても、メンバーは何をするべきか迷ってしまいます。「この設計だとまずいから、こうフォローしよう」「こんな代替案はどうか」というかじ取りをしたほうが、メンバーが動きやすいと考えたんです。それに、ジークスのようなアットホームな会社には、監査機関的な管理は合わないと思ったのもありますね。
ジークスには2つの事業部がありますが、それぞれ別の案件に取り組んでいるため、互いのメンバーが直接会話する機会は多くありません。私は双方の事業部と関わっていて、各案件の状況を広く把握しているので、事業部同士の橋渡しとしての役割もあると思っています。事業部間で人的リソースを融通することを、事業部長に提案することもあります。
「当たり前+α」を目指し、ジークスならではの高品質をつくる
このようにフォローアップを大切にしたサポートを継続することで、プロジェクトメンバーがレビューを前向きに依頼してくれるようになっています。テスト仕様書のレビューでバグが見つかったりと、予想以上に第三者目線のレビューの効果があったと感じています。
一方で課題もあります。今の体制では、設計書などテキストに対してのレビューはできますが、コードへのレビューは難しい部分があります。今後はテックリード的な方にレビューをしてもらうなど、コーディングのノウハウを持ったメンバーに協力してもらうことを考えています。
また、品質管理推進グループでは現状、開発案件に生じた問題をできるだけ早い段階でシューティングして、動作に支障のない「当たり前品質」を保持しています。これをベースにして、ジークスならではの品質の良さをつくっていくのが次のステップ。UI/UXデザインなど制作側の品質もさらに高めて、「ジークスに開発を依頼すれば、こんな高品質のアプリやシステムが仕上がる」と発信できるようにしていきたいと思っています。