株式会社オープンハウス・アーキテクト様

建設業DX支援 工程管理システム開発

紙運用からデジタルへ 基幹システム開発

ハウスメーカーである株式会社オープンハウス・アーキテクト様の、DX推進を支援する基幹システム開発を担当。紙ベースだった工程管理や図面の運用をデジタル化し、各建築現場の進捗や品質に関するデータの一元管理・可視化を実現した。これにより、常に最新の情報を現場の関係者が確認できる状態を作り、コミュニケーションロスを削減。さらに、蓄積されるデータを分析することで、現場の課題可視化やプロセス標準化を目指し、建設業における効率的な工程管理と品質向上を支援するシステムを構築した。

課題

紙媒体の利用による情報共有の遅れ

工程表や図面のような紙を使った運用では、情報共有をリアルタイムに行えず、認識齟齬や手戻りが頻繁に発生し、効率的なリソースのアサインも困難だった。現場情報が一元管理されていないことで、会社全体で状況を正確に把握することも難しかった。また、既存システムはレスポンスが遅く使い勝手が悪かったため、業務効率が低下。このプロジェクトで目指したのは、これらの課題を解決し、Web・アプリを活用した新しい運用への円滑な移行。現場の情報をデータ化し、システムを利用して素早く共有することでコミュニケーションロスを解消する。その実現には大量のデータを活用した設計・実装の最適化を行い、高いパフォーマンスを目指す必要があった。

アプローチ

ユーザー視点で業務フローを再設計

戦略策定、ユーザーインタビュー、要件定義、情報設計という手順を踏み、根拠に基づいた情報を積み上げることでスムーズな合意形成を図った。ユーザー属性ごとにユーザーインタビューを行い、ユーザーの発話から必要最低限のシステムのタッチポイントを判断。これは、既存業務への影響を考慮しながら、ユーザーが自然とシステムを利用したくなるような業務フローを、新たに設計することに役立った。インタビューの分析結果や業務フローをFigmaで視覚的にまとめ、ステークホルダー間で共通認識を持ってプロジェクトを進めた。

画面描画の高速処理と信頼性を追求した開発技術

フロントエンドの実装にはTypeScriptを使用。予期しないエラーを防ぎ、より信頼性の高いソフトウェア構築を行った。画面描画の負荷が高い処理をServerSideRenderingで処理することにより、画面描画の高速化を実現。キャッシュの活用でアプリケーション全体の効率とUXを向上させた。
また、お客様・設計者・実装者間のシステムの認識ズレをなくすため、OpenAPIからコードを生成して、フロントエンド・バックエンド双方のコード生成で、実装工数削減と型定義レベルでのバグ発生の最小化を図った。

建築現場との連携を強化する機能開発

建築に必要な情報を一つのWebアプリに集約し、管理者/作業者それぞれの立場から物件状況を可視化できる機能を実装。
物件の進捗状況を一目で確認できるサマリー機能や作業状況を可視化するための工程表機能、情報の伝達を円滑にする画像/資料の共有機能等、従来の紙面で管理をしていた業務を一新し「誰でも」「いつでも」「最新の情報」を見れる環境を整えた。
これにより、現場の情報伝達と連携がスムーズになり、効率的な工程管理を行えた結果、工期の短縮を実現した。

結果

品質向上とコスト削減に貢献

物件ごとの検査工程の進捗可視化や自動通知機能により、施工業者や大工とのコミュニケーションが活性化された。遅延現場の特定や、マネージャーのメンバー状況把握が容易になったため、作業遅延がゼロの拠点も数多く生まれた。その結果、出戻りのコスト・件数は大幅に減少した。
引き続き現場の意見をもとに迅速な改善を行いながら、全社的な品質・管理の向上を目指して、より使いやすいシステムにするための継続アップデートを続けている。

開発期間
  • 11ヶ月
デバイス
  • PC
採用技術
  • TypeScript(Nuxt)、Java(SpringBoot)
クレジット
Project Manager
Kentaro Ono
Project Leader
Ryo Endo
Engineer
Naoki Kinugawa, Yuki Ushironaka
Director
Hibiki Nagato
Designer
Naoki Hagio

クライアントボイス

DX推進部田中 健次 様
株式会社オープンハウス・アーキテクト DX推進部 田中 健次 様

私たちは、もともとArchitectJumpという業務支援システムを開発・運用しており、ありがたいことにGood Design賞も受賞することができました。しかし、さらに現場レベルまで浸透させ、実務運用に強く根ざした“上位互換”のシステムを作れないかと考えたのが「ArchitectJumpPRO」構想の始まりです。
ArchitectJumpのUI/UXデザインをジークスさんにお願いしていた実績があり、「ユーザー視点で設計できる」という信頼感があったため、今回も迷わずご相談しました。

このプロジェクトでは、システムを“使う側”の目線をしっかり汲み取って、操作感や運用シナリオを丁寧に反映した提案を多くいただきました。また、画面や仕様の話だけではなく、「どういう業務フローに変えていくと、現場に定着しやすいか」という全体像も含めて相談に乗ってくれた点はとてもありがたかったです。
建設業界は属人的な作業が多く、業務の仕組みそのものを変えることには一定のハードルがあります。そこを一緒に並走して考えてもらえたことは大きな安心材料でした。

導入後の現場では、なんと「その日中の実績入力率99%」という非常に高い浸透率を記録しました。単なるシステム導入にとどまらず、現場の習慣そのものに変化をもたらしたと実感しています。また、データ品質も高く、社外の顧客や業者に情報連携できるレベルに達しています。従来は人によってまちまちだった情報管理を、JumpPROによって標準化できたのは、まさに建設業界の常識をアップデートする一歩だったと思っています。
現場ニーズは日々変化しており、今後も業界全体の課題に柔軟に応えるシステムに進化させたいと考えています。これからも、UI/UXの面から業務全体の視点まで、ジークスさんと一緒に「使われるプロダクト」を作り続けていけたらと期待しています。

スタッフボイス

プロジェクトリーダー遠藤 亮(エンドウ リョウ)
プロジェクトリーダー 遠藤 亮(エンドウ リョウ)

このプロジェクトは、オープンハウス・アーキテクト様の従来の業務のあり方を変える”起点”となる重要なものでした。DXを進める上で導入はしたものの、現場に浸透しないケースも多く存在します。我々が重要視したのは、オフラインも含めた現状の業務フローを明確にすることです。紙ベースの運用は、アナログならではのフレキシブルな対応を現場で行なっている場合も少なくありません。単にシステム要件を定義するのではなく、業務を理解し、「どの範囲をどの深さでシステム化する必要があるのか」を丁寧に精査しました。
ユーザーに寄り添ったシステム開発には「お客さまの声」が必要不可欠です。ITのプロの弊社と現場のプロであるオープンハウス・アーキテクト様との二人三脚の共創で、より良いプロダクトができたと確信しています。

デザイナー萩尾 直樹(ハギオ ナオキ)
デザイナー 萩尾 直樹(ハギオ ナオキ)

ユーザーインタビューで得た情報をもとに利用シーンを具体化し、優先順位を明確にしたうえで情報設計を行い、シンプルで直感的な使いやすいUIを実現しました。画面デザインは、今後の他業務システムへのコンポーネント流用も考慮し、お客様の各種システムで一貫性を保てる構成にしています。また、UXリサーチからUIデザインまで一貫して同じデザイナーが担当することで、案件理解が深まり、要点を捉えたUI提案が可能となりました。

システムエンジニア衣川 直輝(キヌガワ ナオキ)
システムエンジニア 衣川 直輝(キヌガワ ナオキ)

JumpPROと各システムの連携がどのように行われるのか、関連する複数のプロジェクト間の認識がずれないように努めました。設計・開発の面では、JumpPRO側で発生する「Event」を元に動作する方式を採用し、システム間の結合を最小にすることができました。