
いま話題の大阪万博に弊社の社長と行ってきました。今回は、その時の体験をデザイナー視点でレポートします!
最新技術の展示や各国の個性あふれる空間に立ち、「いのち輝く未来社会のデザイン」というコンセプトを肌で感じようと、意気込んで綿密な計画を立てて臨んだのですが……私の痛恨のミスにより、なかなか思い通りにはいかず。
まさかの予約ミス!?計画を狂わす最大の落とし穴
冒頭でも触れましたが、私はこの万博計画で最大のミスを犯しています。
それは…パビリオンの参加抽選をし損ねていた、ということです。
万博の抽選には、2ヶ月前、7日前、直前の3回の挑戦権があります。
私がチケットを取ったのはやや遅めのタイミングで、残されたチャンスは「7日前」と「直前」の2回。その時の私は、「まだ2回チャンスあるし、7日前だったら一週間前に抽選すればいいのね〜」なんて、のんきに構えていたのです。
しかし、その“余裕”こそがすべての間違いでした。
参加の7日前、抽選ページを開いてみると……
「7日前抽選は終了しました。次は直前抽選にご参加ください」の文字。
「え、今日ってちょうど7日前じゃない? カレンダー見てもそうだし……え、システムエラー?」と焦る気持ちを抑えて、ページをリロード。
でも表示は変わらず。
よくよくサイトを見てみると、赤字でこんな一文が――
「7日前抽選は、来場日時予約をした日の1か月前から【8日前まで】受付しています。」
……はい、完全に終わってました。
「あ、終わってたんだ……自分、なにしてんだろ……」という虚無感。
このままじゃレポート記事も書けないし、そもそもこの事実、社長になんて言おう……。
次の日、ありのままを社長に伝えると、
「しょうがないよ!」と、ありがたい一言。さすが社長、器が大きい。
その後、なんとか直前抽選で『未来の都市』というパビリオンの予約はできたものの、ほぼ手持ちゼロの状態で当日を迎えることになったのでした。完全に言い訳ですが7日前予約というライティングがややこしいですね。(自分が悪いです、すみません…)
「1ヶ月前予約」とかの方がユーザーを迷わせないライティングになるのではないかと、UI/UXの設計ではそういった部分で大きなミスを生んでしまうなと勉強になりました。
予約はない!覚悟を決めていざ、万博へ!
そして万博参加当日がやってきました。私達は10時に入場するため、入場ゲート前で待機しているとパラパラと小雨が。事前予約のない私たちはとにかく歩いて並ぶしかないのに天気にも見放されたかと空を睨みつけ、効果があったのか入場した頃には小雨も止んでいました。
社長はというと長時間待機と移動の為、前日に鍼を打ち、折り畳み椅子を持参していました。
「僕がしっかり予約を取れていれば待ち時間もなかったでしょうに!申し訳ありません!」
10時前にゲートを通る際に、厳重なセキュリティチェックを受けて入場。海外からも多くの来場者があり、安全対策に力を入れていることがわかりました。ちなみに、瓶とカンは持ち込み禁止らしく、ゲート前にストロングゼロやエナジードリンクがチラホラ転がっていました。
今回私たちは、結果としてオーストラリア、サウジアラビア、スペイン、タイ、フランスの5カ国のパビリオンと、未来の都市という企業参加型のパビリオン、そしてJAXAの展示を体験することができました。
その中でも、特に印象に残ったパビリオンをご紹介します!

中東世界に迷い込む!?サウジアラビアパビリオン
まず紹介するのはサウジアラビアパビリオン。
石油や近代都市のイメージが強い国ですが、展示では歴史・文化・遺産といった側面にも深く光が当てられ、技術革新と伝統が共存する国の姿が丁寧に描かれていました。
中でも印象的だったのは、パビリオン全体の空間設計。白い石垣が高く積まれた建物が立ち並び、基本的には屋外を歩く構成なのですが、通路のまわりはしっかりと囲われていて、他国のパビリオンや視覚的なノイズが一切目に入らない設計になっていました。そのため、万博という会場にいながらも、まるでサウジアラビアの街中を歩いているような没入感があり、異国の空気を肌で感じるような、特別な体験を得られたと感じます。視界に映るものすべてがその国の要素で統一されていることで、自分の意識もその文化の中に自然と入り込んでいくような感覚がありました。
特に目を引いたのは、3Dプリンターによる人工サンゴの展示。繊細で美しい造形がずらりと並び、思わず足を止めて見入ってしまうほどの迫力でした。最初はその美しさに惹かれただけでしたが、よく見るとそれらが環境保護のために作られたものだと気づき、自然と興味が本質へと誘導されていたことにハッとさせられました。美しさとメッセージ性がうまく融合した、心に残る展示でした。


これぞ微笑みの国!優しさ溢れるタイパビリオン
そして今回訪れた中でも、特に心に残っているのがタイパビリオンです。
入り口では、スタッフの方からタイ語の挨拶「コップンカー」を教えていただき、自然と現地の文化に引き込まれるようなあたたかな導入に。スタッフの皆さんもとてもフレンドリーで、空間全体にやさしい空気が流れていました。
続く映像体験では、タイのマッサージや食文化が色鮮やかに映し出され、最後には文化の総集編を“歌”に乗せて届けるというサプライズ演出が。映像内の音楽に合わせてスタッフの方が自然に口ずさんでいた様子がとても印象的で、「これがタイという国の、陽気で温かいおもてなしの心なのだな」と感じました。その何気ないふるまいが、空間全体にやさしさとぬくもりを添えていて、今でもあのメロディがふと頭をよぎります。
この体験を通して、改めて感じたのは、文化や魅力を伝えるうえで、何よりも“人”の存在が大きいということ。展示の内容はもちろんですが、そこに関わる人々の雰囲気やあたたかさがあってこそ、記憶に残る体験になるのだと実感しました。
普段、デジタルプロダクトのUIデザイナーとして、つい機能やUIといった“表面”の最適化に意識が向きがちです。しかしその背景にあるのは「誰のために、どんな気持ちで作られているのか」という想い。それは滲み出るものだと思います。人の熱量や想いが、デジタルであってもちゃんと伝わるように設計すること。情報をただ届けるだけではなく、体験が“記憶に残るもの”になるための仕掛けや空気感を、これからも大切にしていきたいと感じました。
あの空間で得た感覚は、ぜひ多くの人に味わってもらいたいです。
美へのこだわり、フランスパビリオン
次に紹介するのはフランスパビリオンです。
まず驚かされたのは、その人気ぶり。長蛇の列を見て「これは入れるのか…?」と一瞬ためらいましたが、意外にも列はスムーズに進み、40分ほどで入館することができました。時間に余裕があれば、ぜひ挑戦してみてください。
館内では、ルイ・ヴィトンやDIORといったフランスを代表するブランドごとにブースが設けられており、それぞれがとても華やかで見応えのある展示でした。
中でも圧巻だったのは、DIORによる約400点のトワル(デザインサンプル)を壁一面に並べた展示。等身大から人形サイズまで、すべて異なるデザインが施されており、見ていてまったく飽きることがありません。
サウジアラビアのサンゴの展示でも感じましたが、“圧倒的な数”には、それだけで「言葉はいらない、見ればわかるだろう」という意志を感じます。そこにDIORの繊細で緻密な技術が加わることで、ひれ伏したくなるような圧倒的な強さが、美しく繊細な空間の中に静かに漂っているような気がします。
また、フランスパビリオンでは、ピクトグラムが一筆書き風のデザインになっていて、とても印象的でした。館内でも一筆書きのような造形が随所に見られ、視覚的に“つながり”を感じさせる構成になっていました。
あとから知ったのですが、実はこのパビリオン全体のコンセプトは「愛の讃歌」であり、日本の“赤い糸伝説”をモチーフに、日仏の絆を表現していたそうです。他の国ではあまり目に入らなかった部分ですが、さすがはフランス、こういった部分にも気を抜かずにデザインが作り込まれていました。パビリオンを出る最後に気づいたのですが、芸術の国は細部まで抜かりない。


大自然を浴びよ!オーストラリアパビリオン
こちらのパビリオンは館内を進むごとに、オーストラリアの大自然を五感で体験できるよう設計されていて、特に印象的だったのは360度スクリーンによる映像体験でした。
参加者はその場に立っているだけなのに、視界のすべてを覆う映像によって、まるで空を飛び、海に潜っているかのような感覚に。空から海へと続く自然の壮大さや、巨大スクリーンでしか表現できない幻想的な動物たちの姿が映し出され、映像という手法の力強さと魅力を改めて実感させられる展示でした。
特に印象的だったのは、あえて言葉を使わず、映像と音だけで自国の美しさを伝えていたこと。
「自国の魅力を伝えるのに、言葉はいらない」——そんな確かな自信と誇りが、スクリーンの隅々から力強く伝わってくるようでした。

かなう日は近い!?未来の都市
次にご紹介するのは、日本の企業が共同で出展しているパビリオン「未来の都市」です。
ここでは、AI・ロボティクス・再生可能エネルギーなどの先端技術を活用し、環境とテクノロジーが共存する暮らしを、映像やインタラクティブな体験を通して描き出していました。
特に印象に残ったのは、テクノロジーが日常に自然と溶け込み、人々の暮らしにそっと寄り添っているような未来像を体感できた点です。理想論にとどまらず、実際に手が届きそうなリアルさがあり、だからこそ未来に対する期待感が素直に膨らむ展示でした。動物のような四足歩行ロボットなど、移動の概念そのものに挑戦するプロダクトにも出会いました。まだコンセプト段階ながら、こうした技術が近い将来に実装されるかもしれないと思うと、未来が手の届くところまで来ていることを実感します。実現までの課題も多いとは思いつつ、それ以上に「こんな世界が本当に訪れるのかもしれない」という期待が膨らむ展示でした。
子どもの参加者も多く見られ、会場全体が「こんな未来になったらいいよね」とワクワクできるような雰囲気に包まれていました。空間のデザインも「ザ・ミライ」といった印象で、次の世代にとっての夢の入口になっていたように感じます。夢を見ることが自然と促される、そんなパビリオンでした。
宇宙最前線、JAXAを知る
最後にご紹介するのは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の展示です。
こちらは展示というよりも、映像を通じてJAXAの宇宙探査の最前線を体験する構成になっていました。映像は迫力があり、まるで自分が宇宙の旅に出ているかのような没入感がありました。
特に印象に残ったのは、「月に水が存在するかもしれない」という研究に関するパート。もし本当に月に水があるとすれば、将来人類が月で生活したり、資源として水を活用できる日が来るかもしれない——そんな想像をぐっと現実に引き寄せられるような内容で、とてもワクワクしました。
ただの夢物語ではなく、今まさに科学の力で一歩ずつ未来に近づいていることが実感できる、“未知の世界が現実に変わりつつある”ことを感じられる映像体験でした。宇宙に対する見方が変わる、そんな素敵な時間だったと思います。
まとめ
最後に、大屋根リングにも立ち寄りました。開放感のある空間で、会場全体を見渡せる景色は本当に素晴らしく、風に吹かれながらしばらくぼーっとしてしまうほどの気持ちよさでした。
話題になっていたユスリカはおらず。見られることを少しだけ楽しみにしていたので残念でした。
今回、事前予約をうっかり逃してしまったり、いくつかのパビリオンでは並ぶ覚悟が必要だったりと、ちょっとしたトラブルもありましたが、それでも並べば意外と入れる場所も多く、十分に楽しむことができました。
むしろ、計画通りにいかないからこそ、偶然ふらっと立ち寄った展示や、たまたま耳にした他国の文化紹介など、予想していなかった出会いがいくつもありました。情報だけでは辿り着けなかった体験や、自分の興味の外側にあった世界に触れることができたのは、偶然だからこその面白さであり、これも万博の魅力だと思います。多様な国や企業が、それぞれの魅力を全力で伝えようとしている姿に圧倒され、驚いたり感動したりしながら、たくさんの“知らなかった世界”に触れることができた一日でした。
普段は国内のデザインに触れる機会が多く、インプットもアウトプットも日本基準で考えることが多いのですが、今回は各国ならではの見せ方や、その国の中でのスタンダードに触れられたことが、自分にとってとても新鮮で、大きな学びになりました。
どの国も自国の魅力を最大限に伝えようとしていて、中には予算が限られていながらも、工夫や熱意によって強く印象に残る展示をしているところもありました。美しく整っていることだけが良いデザインではなく、そこに込められた思いや熱量があるからこそ、人の心を動かすものになる。そんなことを改めて感じる機会となりました。
皆さんもぜひ事前予約をしっかりした上で、万博に足を運んでみてはいかがでしょうか?
