INTERVIEW

新卒3年目で新事業を立ち上げたエンジニアの話(前編)

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今回は、ジークスのグループ企業・ウーブ(WVVU)の取り組みにクローズアップ。2022年に正式版がリリースされた手書きアプリ「Limeboard」など、自社プロダクトの開発・運営を行っています。今回は、同社執行役員の久保仁詩(くぼ・にいし)さんにインタビュー。前編では、ジークスに新卒入社してから3年目でウーブ創立メンバーとなった久保さんの軌跡と、Limeboardリリースまでのストーリーを紹介します。

「ものづくりがしたい!」熱い思いが新事業に

― まず、久保さんが手がけたアプリ・Limeboardについて教えてください。

Limeboardは、iPadで使える「考えるためのデジタル手書きツール」アプリです。何かを考えるとき、紙とペン、あるいはホワイトボードや付箋でアイデアを膨らませた経験は誰にもあると思います。それをデジタル上で再現し、大きなキャンバスを自由に使って創造と思考を加速させてくれるのがLimeboardです。

特徴は、ペンや付箋など現実の文房具に近いユーザーインターフェース。画像も簡単に追加できますし、iPadとApple Pencilがあれば誰でも使えるアプリになっています。もうひとつは、縦横無限に広がる書き込み領域。大きなキャンバスの中に、トピックごとのサブキャンバスを複数置くことも可能です。日本国内はもちろん、欧米や中東をはじめ、世界中で利用されています。

Limeboard iPadの画面01
Limeboard iPadの画面02

― 久保さんは、もともとジークスのエンジニアだったんですよね。

2015年に新卒でジークスに入社しました。就職活動中、ジークスがクリエイティブも開発も手がけていることを知って、「ここに入ったら、おもしろいこと、新しいことができそう」と思ったんです。会社説明会で代表の渡辺が柔らかい雰囲気で、社員の発言を受け入れてくれる包容力があると感じたのも決め手になりました。

それと、当時は具体的なキャリアパスが描けていなかったので、社内でさまざまな業務を経験してジョブチェンジできるのも魅力でした。

― 当時から新規事業への思いはあったんですか?

そうですね。そのためにまずはエンジニアとして、システムやアプリをつくる仕組みをきちんと理解するところから始めようと思いました。理工学部出身とはいえ、プログラミングは苦手分野。最初は大変でしたが、1年目から仕事の楽しさを感じていました。自分が書いたコードが実際に多くの人が使うものになるのでつくりがいがあるし、ジークスでは上流から下流まで、開発工程の一連の流れを見られる。そのうち開発業務を自分一人に任せてもらえるようになって、自信もつきました。

ただ、お客さまから受託する案件は予算やスケジュールが決まっていることもあり、ユーザーニーズの深掘りや僕たち作り手のアイデアを簡単に反映できるわけではありません。「自分たち発信のものづくりをしてみたい」という気持ちが日増しに強くなっていた2年目、ジークス社内で新規事業開発グループが立ち上がることになり、自ら手を挙げました。

― その活動が、現在のウーブにつながっているんですね。

本格的にウーブ設立の流れができたのは3年目の後半でした。日々の業務をこなしながらの新規事業開発グループ活動はスピード感に欠け、なかなかアイデアを実現できない状態。「本気で取り組みたい!」と代表の渡辺に申し出て、ウーブ設立の流れができました。

2017年にウーブが立ち上がり、僕は創立メンバーとしてエンジニアの経験を活かして事業開発を進めながら、ビジネスサイドとしてセールス・マーケティングの業務に従事。そこではプロダクトの良さを伝え、使ってもらうためのプロセスを学びました。

Limeboardを手がけた男性

本当に必要とされるプロダクトを目指して

― Limeboardのアイデアはどんなきっかけで生まれたんでしょうか?

立ち上げ期はアイデアの種が浮かんでは消え…の繰り返しでした。自分が「絶対にこれをやりたい」という事業でなければ長続きしない。ボツになった案は何十個もあります。

そんな折、2018年にApple Pencilの第2世代が発売され、話題になりました。はじめてiPadをさわり、書き心地の良さに感動してビビッときた。もともと手書きが好きだったし、まだ世の中にない何か突き抜けたものをつくるアプリ開発プロジェクトがスタートしました。

2018年当時、Slackなどオンラインでつながるツールが世の中に浸透しはじめていました。iPadで書いたものをオンラインで見せながらブレストしたり、自由自在に使えるデジタル上のキャンバスを思いつき、開発に着手しました。

Limeboard iPadの画面03

― ウーブ初のプロダクトづくり、どんなことを意識していましたか?

大事にしたかったのは、使われ続ける、意味のある製品をつくることでした。ただ、ウーブという会社は誰も知らないし、まだなにも製品が世に出ていない状態。その中でどう良いものをつくるかということを考えていました。

思考アプリとしてのLimeboardのコンセプトを固め、エンジニアの知見を生かしてプロトタイプも自分で開発。ユーザーヒアリング・マーケティングをしてみて、まずは目に見える関係づくりが大切だとわかったので、社内外を問わずさまざまな人とつながるようにしました。プロダクトを知ってもらうために、ビジネスマッチングツールも活用して、たくさんの人と会ってLimeboardのプレゼンをしました。

ジークスメンバーの協力が得られることになり、2019年から本格的なアプリ開発に着手。2020年7月にベータ版、そして2022年1月には正式版リリースに漕ぎつけることができました。

次回、ジークスとのコラボが生んだLimeboardのアプリ開発秘話に迫る

ジークスに新卒で入社した当時から、新事業の立ち上げへの思いを持っていた久保さん。エンジニアとしてのスキルを身に着け、仕事のおもしろさを知る中でその思いを強くし、ウーブで新事業に取り組むことに。iPadをさわる中で浮かんだLimeboardのアイデアを磨き上げ、4年がかりで正式版リリースに至りました。後編では、ジークスメンバーとどのように協働してLimeboardを形にしたのか、引き続き久保さんに伺います。

【後編】コンセプトワークからアジャイル改善まで、ジークスが伴走したLimeboard開発