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業務システムUI/UX改善(前編)失敗しない進め方とは?

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デザインとシステム開発力で企業のIT導入をサポートするジークスは、一般消費者向けや企業様向け、Webシステム、アプリケーション開発など、様々なプロダクト開発のご相談をいただきます。今回はご相談の多い「業務システムのUI/UX改善」を取り上げ、実際のプロジェクトで見えてきた失敗しないためのポイントや、業務システムならではのUIデザインの工夫について、2回に分けてお伝えします。
前編は業務システム特有の課題や、UXを向上させるポイントにフォーカスします。

業務システムUI/UXのよくある課題

インターフェース(UI)を改善して使いやすくする点では、一般消費者向けも業務システムも変わりはありません。しかし、業務システムならではの課題や、進め方で注意すべきポイントがあります。
まずは、実際にご相談いただくことが多い具体的な課題のパターンを整理してみます。

  • 業務システムが使いづらく、業務効率が上がらない
  • 社員の満足度が低く、現場から改善要望の声が多い
  • 使いづらいことは認識しているが、どこから手をつければいいかわからない
  • 現状のUIの客観的評価や具体的な改善策がわからず、プロジェクト化の承認が得づらい
  • デザインがトレンドに沿わず古い

最後に挙げた課題は見た目の話の場合もありますが、調査の結果、ユーザビリティや体験上のボトルネックが見つかることもあります。
一般消費者向けも企業様向けも、UI/UXの観点から分析することで、本質的な顧客体験の欠陥が明らかになることは多い、と言えるでしょう。これが、現在"デザイン"が様々な領域で重視される理由です。

業務システムならではのUI/UXの特徴

次に、業務システムが一般消費者向けのシステムと違う点を見ていきます。

  1. ユーザータイプと達成タスク
    ユーザーは「業務」という特定の状況で操作するため、業務上どのような属性ユーザーが何のタスクを達成するために利用するのか?を理解して設計を行います。例えば、「社員Aは出社後にタスクの承認業務を早めに終えるため、この機能を操作する」「毎日2回この操作を行う」のような条件です。また、その社員が何に対して不満を持っているか、どうしたら嬉しいかを把握します。
    最近では、人材不足により教育コストを軽減したい、というニーズもあります。その場合は、新人や別業種から転職した方が対象となり、機能のわかりやすさや、操作が不明な時でもベテランを必要としないUIが望まれます。
  2. ユーザーの利用状況
    業務システムの場合、ユーザーは仕事現場で業務フローに沿ってシステムを操作します。そのため、一般消費者のように自分の意思で利用の選択はできません。操作性が悪くても日々強制的に利用する必要があり、操作感は業務へのモチベーションにも影響します。仕事現場ならではの、システム外の環境による影響もあるでしょう。これらの点も事前にインプットして、改善検討に入ります。
  3. 改善の目的
    一般消費者向けの場合も、ユーザー像と達成目標の理解は行いますが、業務システムは設計上重視する箇所に「業務効率を上げる」という明確な目的があります。そのために業務フローを短縮したり、自動処理機能の実装などを検討します。
    効率化できればユーザーのストレスが減るため、コスト面のみならず、社員のモチベーションやエンゲージメントにも影響すると考えられます。
業務システム

業務システムのUI/UX改善アプローチ

ここでは、いくつかの業務システム改善アプローチに触れたいと思います。

業務フロー理解、現状システムの理解

業務システムを改善する上で、まずはユーザーの業務フローを理解する必要があります。
既存システムの機能はなぜ採用されたのか?どのような業務フローが存在するのか?実装の実現性の制限で今の設計になっているのか?など、ユーザーの理解と同時に業務フローも理解し、操作時のアクションフローを検討します。

既存業務システムの評価

既存業務システムのどこが使いづらいのかを確認し、改善案に繋げる場合は、UI/UXのエキスパートによる評価を行います。評価軸を元に客観的な視点で課題を洗い出し、優先度を付けて改善案を検討する進め方です。
課題にも様々なタイプがあり、タイプごとにグルーピングを行うことで、既存システムの課題の傾向が見えます。課題には重要度をつけ、致命的な課題から取り組む計画を立てて進行します。

課題のグルーピング

2つのリサーチ

上記の評価もリサーチの1つですが、ここでは改善案の検討前に行う主なリサーチについて触れたいと思います。
1つはアンケートなどの定量調査です。傾向を把握するために、ユーザーに対してアンケートなどを実施します。お客様が解析データを集計している場合は、ユーザー行動の結果をご提供いただくこともあります。全体傾向を掴む際は、定量データを確認すると良いでしょう。
もう1つは、ユーザーインタビューや行動観察による定性調査です。実際に利用する姿を見ると、ユーザー自身が認識していない課題があります。面倒な操作を「当たり前」と思い利用する場合は、観察やインタビューによる深掘りを行います。そこにはフロー改善や効率化に向けた工夫の余地が隠れていることもあり、いずれも適切な質問が必要ですので、チーム内で調査設計を行い実査に進みます。

ローファイデザインとプロトタイプ

リサーチ結果から改善案を検討し、素早くアウトプット・検証することも重要です。デザインの粒度が粗い状態で簡易的なプロトタイプを作成し、ユーザーからフィードバックを得て感触を確認します。それにより、デザインや設計を作り込む前にブラッシュアップが可能になります。
簡易的なプロトタイプはプロトタイピングツールを使い、主要画面の導線やコンテンツを早期に作成します。早い段階の業務システム検証は、テスト用のダミーデータで確認できることも多く、プロトタイピングツール利用に適しているかもしれません。

プロトタイピング

改善サイクル導入

業務システムに関わらず、プロダクトは作って終わりではありません。調査/検証を繰り返し改善することで、品質が上がりユーザーの満足度も向上します。リリース後のインタビューやアンケートでニーズを収集し、次の改善に繋げる活動を組み込みながら、業務システム改善のノウハウを蓄積することも重要です。

改善サイクル

今回は、実際のプロジェクトで見えた「業務システムUI/UX改善」のポイントをご紹介しました。後編は、業務システムのUIデザインについて詳しくご紹介します。

ジークスでは、UXデザイナー、UIデザイナー、エンジニアが業務システムのUI/UX改善支援を行っています。業務システムのUI/UXでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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【後編】業務システムUI/UXデザイン改善